さむ〜い季節はしっとり読書。
一流はこうして運命の一冊と出会う。
 

文庫本
気軽な形で活字体験を提供する、日本が誇るアナログメディア。
人は、"105×148mmのソフトカバー"という宇宙に没頭し、泣き、笑い、そして驚愕する。その形態からモバイル性にも優れており、あらゆるシーンで読書を身近なものにさせている。デジタル時代でも文庫本は永遠。



津島「ムンバイ。」
高田「ええニューヨーク」
津島「ムンバイは読書はお好き?」
高田「もちろんよニューヨーク。本の数だけ生き方がある。
文庫本は、人生旅行のチケットなんですもの。でも・・・」
津島「でも?」

高田「それだけじゃちょっと物足りない・・・」
津島「そういうこと。色んなストーリーを楽しむのは当たり前。
一流は、読書にさらにプラスアルファを求めるのよ。
いい意味で貪欲なの。そんなわけで今回はファーストクラス、オススメの2冊よ!」

高田「まずはわたくしムンバイから。私がオススメする1冊は(文庫出して)
二葉亭四迷の『浮雲』。教科書にも出てくる歴史的一冊」
津島「『浮雲』・・・。ムンバイ、これにストーリーを追う以外に
どんな楽しみ方があるというのかしら」
高田「ざっと見てみればわかるわ(渡して)」

津島「(ばらばらっと見て)・・・もしかして」
高田「そうなの!」
【以下オフコメ】
『浮雲』は、それまで書かれていた文語体小説とは違い、初めて言文一致体で書かれた小説。しかしそのエポックメイキングな道のりは険しく、書き終わるのに実に4年もかかっている。だから見て・・・最初と最後で見た目が全然違うのよ!冒頭はまるで江戸時代のお固い漢字文だけど、ラストの方は横文字やビックリマークを多用しているの。
【開け】

津島「なるほど・・・」
高田「そう。まるで不二子不二雄先生が、『ドラえもん』の顔を
徐々に書き慣れていくような成長感を、一冊の本で楽しめるというわけ」
津島「ムンバイ、見事だわ。たまに1巻を読むと『あっ、ドラえもんって最初は
こんな顔してたんだー』ってことあるものね・・・」
高田「さて、ニューヨークの番のようね」
津島「ええ。私がオススメする1冊は(出して)、
昭和中期の大文豪・谷崎潤一郎の『細雪』よ。見て・・・」

高田「(手にとって)厚い・・・まるで羊かんのよう・・・もしかして?」
津島「そうなの」
【以下オフコメ】
『細雪』は大阪の優雅な四姉妹を描いた一大絵巻だけど、特筆すべきはその厚さ。その4cm弱のボリュームは、文庫本のくせに自立することができるという優れもの。
【開け】
高田「お好みの花びらを押し花にするのもよし、オブジェとして部屋に飾るもよし…」
津島「そしてさらに図書館なんかで、同じ本を取ろうとして手が触れてしまうっていう状況、あるわよね。こんな素敵な出会いも、例えば夏目漱石の『三四郎』6mmに比べて約6倍も可能性を高めてくれるって訳」
高田「ニューヨークさん・・・さすがです」

津島「(うなづき)図書館は、大体なぜか第三月曜が休みだから、気をつけてね」
(VTR)
津島「主人公じゃなくっても、誰もが自分のストーリーを持ってるわ」
高田「あなたの文庫本にはどんなことが書いてあるかしら」
津島「本日の機長はあなた、フライトアテンダントはわたくしニューヨークと」
高田「ムンバイでした。皆様のまたのご搭乗、心より」
2人「お待ちしております」